アメリカは敵か味方か?
日本企業が考えるべき通商戦略の本質
投稿日:2025年7月|カテゴリー:通商政策・国際戦略
目次
はじめに:味方のふりをした「交渉相手」
「アメリカは味方だ」「自由と民主主義を共有するパートナーだ」と私たちは教わってきました。
しかし、通商の場では、アメリカは極めてしたたかな“交渉者”です。
2025年の関税合意──日本のコメ輸入を即75%拡大し、関税15%を一律化したこの合意の背後には、米国の選挙戦略と経済的思惑が見え隠れします。
1. 通商交渉は「外交」ではなく「経済戦争」
アメリカの通商政策は、同盟国であっても容赦なく国益を優先します。
- 鉄鋼・アルミに一方的な追加関税(2018年)
- 自動車・農産物を交渉カードとして頻繁に使用
- 為替・知的財産権にも強硬な姿勢
つまり、アメリカは“味方”ではなく“ビジネス上の交渉相手”と見るべきなのです。
2. 日本企業が直面する「3つの選択」
アメリカとの取引において、日本企業は次の3つの選択を迫られています:
- 輸出を守るためのコスト競争力強化
- アメリカ市場に依存しすぎないポートフォリオ構築
- 現地化(ローカライズ)とパートナー戦略による分散
どれも一長一短ではありますが、いかに“主体的に交渉力を持てるか”が鍵になります。
3. 通商戦略に必要な「3つの視点」
単なる価格競争ではなく、以下のような複合的視点が必要です。
- 技術力・品質の優位性を示すエビデンス設計
- 政治・外交リスクのシナリオ設計
- 持続可能性(ESG)や地域貢献のアピール
アメリカ企業や行政は、これらの「文脈」に敏感です。数字だけでなく、「物語」がある企業が選ばれます。
4. 日本政府・企業が一体で動く時代へ
かつては“企業は民間”で“外交は政府”という線引きがありました。
しかし今や、国際通商においては民と官が連携する戦略性が求められています。
アメリカ側は常に、州政府・連邦政府・企業・ロビイストが一体で動きます。
日本もそのスキームを学ぶべきタイミングに来ています。
おわりに:味方か敵かではなく、どう付き合うか
アメリカは「敵」ではありません。
しかし、無条件に信頼できる「味方」でもありません。
だからこそ、感情ではなく戦略で向き合うべきなのです。
日本企業が生き残り、伸びていくためには、相手の本質を見抜き、堂々と交渉できる知恵と胆力が求められています。
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