1. 今日のニュースが投げかける問い
2025年8月7日(米国時間)、トランプ米政権が日本製品に対して一律15%の関税を上乗せする 「相互関税措置」を本格発動しました。本来、日米合意では 15%未満の関税率品目は15%に統一し、15%以上の品目は上乗せしない はずでした。
しかし実際には全品目で15%が上乗せされ、日本企業に想定以上の負担が発生。 米ワシントンを訪れていた赤沢亮正経済再生担当相は米側閣僚と相次いで協議し、 「大統領令の内容は日米合意に沿っていない」と抗議。米側は「内部処理上の問題」と説明し、 さかのぼって過剰分を返金すると約束した旨を明らかにしました。
これは単なる手続きミスなのか、それとも交渉姿勢の一端なのか──。 今回の出来事は、日本が経済や安全保障の多くを米国に依存している現実を改めて突きつけました。
2. 遣唐使廃止と依存脱却の歴史的教訓
西暦894年、菅原道真は遣唐使を廃止しました。唐の衰退や航海の危険、費用負担など現実的理由による判断でしたが、 結果的に日本は唐文化から距離を置き、寝殿造や仮名文字に象徴される “国風文化”を開花させました。
依存先を変える、あるいは断つ決断は混乱を伴いながらも、長期的には文化や産業の自立を促すことがあります。 では、もし現代の日本が米国との国交を断絶したらどうなるのでしょうか。
3. 仮想シナリオ:日米国交断絶のマイナス面
- 経済:輸出入の急停止による産業崩壊、円安・株価急落、サプライチェーン寸断
- 安全保障:日米安保破棄、在日米軍撤退、防衛費の激増
- 生活:エネルギー・食料の価格高騰、米国製品の入手困難、渡航制限
- 国際関係:米同盟国との関係悪化、国際的孤立リスクの高まり
現実的に見れば、このマイナス面はあまりにも大きく、国交断絶は経済・安全保障の両面で 自傷行為に近い結末を招くでしょう。
4. それでも見えるプラス面
- 国内産業の自立化:農業・製造業・エネルギーで国産化が加速
- 外交の多角化:アジア・欧州・中東との経済・安全保障協力の強化
- 文化的自立:米国文化一辺倒から、日本文化や多言語教育への回帰
外部依存の見直しは、新たな文化や産業を生む契機になり得ます。
5. 見えにくい依存──OSとITの覇権構造
経済や軍事だけでなく、情報技術でも日本は深く米国に依存しています。 1980年代には国産OS「TRON(トロン)」が教育・産業分野で採用拡大の兆しを見せましたが、 米国側の圧力で普及の芽を摘まれたとされます。その後、PC市場はWindowsが支配し、 企業は毎年多額のライセンス料を海外に支払い続ける構造が定着しました。
SlackやZoomなどのコミュニケーション基盤、クラウド、生成AIも多くが米国発です。 「作れない」のではなく、「作っても使わせてもらえない」という 標準規格・市場アクセスの問題が横たわっています。
6. 結論──断絶は無理でも、自立はできる
現実的に日米国交断絶は不可能に近い。しかし、今回の関税措置は 「依存度を下げる準備を怠るべきではない」という教訓を与えてくれます。
- 自前のGPS(測位衛星)網の整備
- 自前の防衛力・防衛産業の強化
- 自国OSや国産クラウドの育成
- エネルギー・食料の国内生産比率向上
いつでも「選べる立場」を持つことこそが、真の対等な外交の基盤です。 894年の遣唐使廃止から1,100年以上がたった今、日本は再び“大国依存”を見直す岐路に立っています。
また、依存先を米国から他の大国へ単純に切り替えることは、結局は新たな依存を生むだけです。重要なのは、どの国とも必要な協力はしつつ、どこにも過度に頼らない“選べる立場”を築くことです。