愛知県飛島村にある「飛島学園」は、全国的にも注目される義務教育学校です。実は、千尋進学塾の卒業生で現在は労務業務(給与計算や社会保険手続き)を非常勤で担当している女性が、愛知教育大学の学外研修の一環としてこの飛島学園を訪れました。彼女は四日市高校を卒業後、教育の現場を体験する中で「教室の壁がなく開放的」「給食がビュッフェ形式でおしゃれ」と語り、非常に感銘を受けた様子でした。その感想からも、飛島学園が従来の学校の常識を覆す存在であることがよくわかります。この記事では、教員の働き方、保護者の評判、ICT活用の三点を中心に、他地域の先進事例と比較しながら、その革新性を紹介します。
\シリーズ連載中!/ 桑名市の学校再編を5回にわけて解説しています:
教員の働き方改革と教育現場の変化
飛島学園は小中一貫の義務教育学校として、9年間を通じた継続的な教育体制が特徴です。教員は生徒の成長を長期的に見守り、いわゆる“中1ギャップ”を防ぐ構造になっています。
特に注目すべきは、教員の負担軽減に向けた取り組みです。2023年度より、休日の運動部活動は民間委託され、教員が授業準備に集中できる体制が整備されつつあります。また、ICT機器の導入による業務効率化も進んでおり、教育と労働環境の両立を目指した取り組みが実施されています。
類似の先進事例としては、茨城県つくば市の「みどりの学園義務教育学校」が挙げられます。同校では、フラットな職員室配置やペーパーレス化などを通じて、教職員間の連携強化と効率化を実現しています。
保護者の評判と地域からの信頼
飛島学園の施設は私立校並みとも評されるほど充実しており、保護者からの評価も高水準です。木目調で温かみのある校舎、中央に設けられた図書館「メディアセンター」、広大なグラウンド、温水プールなど、子どもたちが快適に学べる環境が整っています。
教育面でも、小中一貫による異学年交流やふるさと教育、英語教育への注力が評価されています。英語は小1から導入されており、オンライン英会話や国際交流も積極的に行われています。
一方で、「学力にばらつきがある」「文化部が少ない」「不登校児の割合がやや多い」といった保護者の懸念も見られます。施設面の満足度が高い一方、指導面での改善余地も指摘されている点は、他地域の義務教育学校と共通する課題です。
ICT活用とSociety5.0に対応した教育
飛島学園では、GIGAスクール構想に基づいて一人一台のタブレット端末を配布し、校内のWi-Fiも全教室に整備されています。授業中のタブレット活用はもちろん、家庭学習や欠席時の連絡などにもICTが活用されています。
特に英語教育ではAIによる発音判定アプリや、海外の学校とのオンライン交流、企業連携による探究型プログラムなどが実施されています。ロケット開発工場の見学やプログラミング体験など、実社会とつながる学びが展開されています。
つくば市のようなICT先進校と比較しても遜色なく、校舎設計と教育ICTが一体となって活用されている点は飛島学園の強みです。開放的な教室設計やオープンスペース、図書との動線なども、ICTを活かした協働学習に適しています。
学校再編・統廃合の示唆
飛島学園のようなモデルを見ると、地方自治体が進める学校再編の方向性が見えてきます。古い校舎ではバリアフリーや冷暖房、ICT配備が難しくなり、教育水準や保護者の期待に応えるには限界があります。
「小学校が遠くなるから反対」という声には、子どもをできるだけ身近な環境で学ばせたいという保護者の切実な思いが込められています。しかし、それに十分応えられない現実があるのも事実です。学校建設や維持には多額の税金が必要であり、限られた財源の中で教育環境を充実させるためには、時に集約という選択が不可欠になります。もちろん、学校の立地には利便性だけでなく、地域バランスや通学の安全性など多様な観点からの検討が求められます。「良い学校ほど遠い」と感じられることもあるでしょう。だからこそ、集約の必要性と地域の声との折り合いを丁寧に図りながら、教職員の人材確保や職場環境の改善も視野に入れた未来志向の再編が必要とされているのです。
結びに
飛島学園は、教育の質、施設環境、教職員の働き方、保護者の満足度、ICT活用のいずれにおいても、現代的な課題と向き合う“次世代の学校”の姿を体現しています。教育の未来を考える上で、非常に示唆に富む事例です。
千尋進学塾としては、特定の方向性を推進したり反対したりする立場ではなく、中立の視点から情報を整理し、より良い方法がないかを日々模索し続けています。学校再編や統廃合のような行政判断や政治的意思決定がなされた場合には、地域の民間教育機関として、その変化に柔軟かつ迅速に対応できるよう、常に準備と検討を重ねていく姿勢を大切にしています。
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