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共産党ってどんな考え方? ― 過去と現在を比べてみよう

工場の煙突と未来都市を本がつなぐ、歴史の流れを象徴する教育的イラスト

昨日は自由民主党の総裁選について書きました。今回は、もう一つの大きな政治思想である「共産党」を取り上げます。賛成・反対を論じるのではなく、歴史や思想を対比構造で整理し、高校生にも読みやすく解説します。

ポイント 「対比」で学ぶと、同じ名前でも中身がどれだけ違うかがクリアになります。今回は「過去⇄現在」「国ごとの差」の2軸で見ていきます。

目次

1. 共産党の原点にある考え方(マルクス主義)

共産党の思想的な土台は、19世紀のマルクスとエンゲルスがまとめた「マルクス主義」です。むずかしく聞こえますが、基本のアイデアはシンプルです。

  • 歴史は経済で動く:社会の仕組みは生産の方法(経済の土台)によって変わる。人類は 奴隷制 → 封建制 → 資本主義 → 社会主義 → 共産主義 と進むという段階の見取り図が有名です。
  • 資本家と労働者の対立:資本主義では、資本家が労働者から利潤を得る仕組みがあり、ここに「搾取」が生まれる。この対立(階級闘争)が歴史を押し進めるエンジンだと考えます。
  • 最終ゴールは平等社会:やがて私有財産や階級がなくなり、国家も必要なくなる理想社会=共産主義に至る、と想定します。

要するに、原因(経済の矛盾)→ 過程(階級闘争)→ 結果(社会主義・共産主義)という一本筋の通った論理で社会変革を説明する枠組み、というわけです。

2. 日本共産党の「昔」と「今」を対比する

昔:戦前〜戦後直後

  • 当初は国際組織(コミンテルン)の影響が強く、革命による政権獲得をめざしました。
  • 戦後には一時期武装闘争も掲げましたが、日本社会の現実と合わず、支持を広げられませんでした。

今:戦後の転換以降〜今日

  • 武力革命を否定し、選挙と議会を通じて社会を変える方針へ。
  • 日本国憲法を評価し、とくに平和主義・基本的人権を重視。
  • 他国の共産党に依存せず、自主独立の立場を明確化。

結論:日本共産党は「革命志向」から「民主主義的な改革」へと大きく舵を切った、世界でも珍しい議会型の共産党です。

3. 「国ごとに違う」世界の共産党を対比する

同じ「共産党」という名前でも、歴史の出発点や社会の条件が違えば、路線・組織の形・政策の優先順位は大きく変わります。

旧ソ連の共産党

  • 一党独裁+計画経済を徹底。初期の重工業化や軍事力増強には成功。
  • しかし、やがて非効率と腐敗が深刻化して行き詰まり、体制は崩壊へ。

中華人民共和国の共産党(一般に「中国共産党」と呼ばれます)

  • 毛沢東期は大衆運動・農村革命を強調し、文化大革命などの混乱も経験。
  • 鄧小平期以降は市場経済の手法を取り込み、「社会主義市場経済」というモデルを構築。
  • 一党支配は維持しつつ、経済成長とナショナリズムが政治的支柱に。

日本の共産党

  • 旧ソ連や中華人民共和国と一線を画し、独裁・武力闘争を否定
  • 選挙と憲法の枠組みを尊重する独自路線を展開。
観点日本旧ソ連中華人民共和国
政治体制の基本議会型・選挙重視一党独裁一党支配を維持
経済運営市場経済の枠内で改革志向国家による計画経済社会主義市場経済(市場手法を導入)
対外姿勢自主独立(他国に従属せず)世界革命の中心を自任経済成長とナショナリズムを強調
方法論国民合意・憲法尊重中央集権・強制力柔軟な実利路線+党の指導性

4. 思想の「構造」を対比でつかむ

理想と現実

  • 理想:階級も搾取もない平等な社会(共産主義)。
  • 現実:国ごとに「独裁型」「民主主義型」など複数の実践形が生まれた。

目標と方法

  • 目標:資本主義の矛盾を乗り越える社会を作る。
  • 方法選挙・議会による漸進(日本)と、党が主導する急進(旧ソ連・中華人民共和国)という対比。

理念と歴史条件

  • 理念:平等・自由・搾取の克服という普遍的価値。
  • 条件:戦後日本の憲法と民主主義、革命で成立した旧ソ連、内戦勝利から出発した中華人民共和国——それぞれの土台が路線を分けた。

学習Tip 受験・定期テストでは「名称」よりも「構造」をおさえると強いです。
例)理想⇄現実目標⇄方法理念⇄条件の3ペアで要点整理。

5. まとめ:対比で見ると、違いがはっきりする

  • 共産党の核はマルクス主義の論理(経済の矛盾 → 階級闘争 → 社会主義・共産主義)。
  • 日本共産党武力革命を否定し、選挙・憲法を重視する独自路線へ。
  • 旧ソ連中央集権と計画経済を徹底し、最終的に体制が崩壊。
  • 中華人民共和国市場手法を取り入れつつ一党支配を維持する実利路線。

同じ「共産党」という名前でも、中身は歴史的条件と社会の土台によって大きく変わります。学ぶときは、理想と現実・目標と方法・理念と条件の対比で整理してみてください。理解のスピードがぐっと上がります。

※本稿は中立的な学習解説を目的としています。具体の政策評価や是非は扱っていません。

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