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あの太宰治でさえ、何度も直していた――原稿に見る“書く力”の裏側

太宰治の肖像と代表作をイメージしたクラシックな文学表紙風イラスト

2025年6月。国語教育に携わる者として、見逃せないニュースが飛び込んできました。
それは、「走れメロス」「人間失格」などで知られる太宰治の未発表短編小説『雀』の生原稿が発見されたという報道です。

東京都内の古書店で偶然見つかり、三鷹市が約880万円で購入。6月6日から市立図書館で公開される予定とのこと。
古びた38枚の原稿用紙には、推敲の跡がびっしり残っており、「うめんた雑巾ぶりがうかがえる」と表現されています。


「才能」ではなく、「地道な積み重ね」

太宰治といえば、「天才肌の作家」「一気に書き上げるイメージ」を抱く人も多いかもしれません。
しかし、今回の生原稿には何度も何度も書き直した跡が残されていました。

これは、「書く力」というものが
一発で生まれるものではないという事実を物語っています。

作家でさえそうであるならば、ましてや中高生にとって、
作文や記述問題を「うまく書けない」のは当たり前のこと。

重要なのは、そこからどれだけ練習と修正を重ねられるかです。


読解と作文は、表裏一体

国語の勉強というと、読解と作文を別々に考えてしまいがちですが、
実は読める子は、書ける。書ける子は、読める。

どちらも「相手の言いたいことを理解し、それを自分の言葉で整理して伝える」力だからです。

千尋進学塾では、この両者を切り離すことなく、
記述式問題への対応力読解力を伴った表現指導を大切にしています。


今こそ「国語教育の価値」を見直すとき

受験や成績において、どうしても数学や英語といった“点数化しやすい科目”に目が行きがちです。

しかし実際には、どの教科にも「読んで」「理解して」「書く」力が必要です。
理社の記述、英作文、小論文…どれも土台は国語力にあります。

今回の太宰治の生原稿発見は、国語教育の「本質的な価値」を改めて問い直す良い機会ではないでしょうか。


まとめ:「うまく書けない」は、書き始める理由になる

最初からうまく書けなくていい。
大切なのは、「伝えたい」と思い、何度でも書き直していくこと。

太宰治でさえ、そうしていました。

千尋進学塾では、生徒一人ひとりの「書く力」をじっくり育てます。
地道な積み重ねの先にしか、本当の表現力は育ちません。

📩 ご質問・学習相談はこちらから(LINEでもお気軽に)
https://lin.ee/eGqJGIW

目次

太宰治は東京大学の出身です


■ 太宰治(だざい おさむ)略歴

1909年(明治42年)〜1948年(昭和23年)
青森県出身の小説家。本名は津島修治(つしま しゅうじ)。
東京帝国大学(現・東京大学)文学部に在籍中から作家活動を始め、無頼派文学を代表する存在として活躍。

代表作には『走れメロス』『人間失格』『斜陽』『女生徒』などがあり、独特の文体と心情描写で多くの読者に親しまれています。

繊細な感性とユーモアを持ち合わせた作品は、今なお多くの中高生の教科書にも掲載され、時代を超えて読み継がれています。

■ 太宰治の代表作8選とその解説

1. 走れメロス(1940年)

友情と信頼をテーマにした短編小説。
約束を守るために必死に走るメロスの姿が描かれ、「人は信じ合えるのか?」という根源的な問いを投げかけます。中学校の教科書にも頻出。

2. 人間失格(1948年)

太宰の遺作とも言われる長編小説。
生きることに違和感を抱きながらも、人との関わりを求め続ける主人公の葛藤が描かれています。「生きづらさ」とどう向き合うかを考えさせられる一冊。

3. 斜陽(1947年)

没落する貴族一家を描いた長編小説。
「斜陽族(しゃようぞく)」という言葉を生んだ作品で、戦後の価値観の変化や、若い女性の自立を描いています。

4. 桜桃(1948年)

「子は親の心を知らぬ」という一文が有名。
育児や家庭生活をユーモアと皮肉を交えて描いた短編で、親としての悩みや人間の弱さが滲みます。教育者や保護者にも響く内容。

5. 駆込み訴え(1935年)

聖書の「ユダの裏切り」をテーマにした一人語り形式の短編。
信仰と人間の矛盾、愛と裏切りが交錯する独白は、読む者に強い印象を残します。宗教文学の側面も。

6. 女生徒(1939年)

14歳の女子中学生の1日を描いた作品。
日常の出来事や内面のゆらぎを繊細に言語化しており、感受性豊かな文章が特徴。「共感できる」と人気の高い一編です。

7. 富嶽百景(1939年)

太宰が静養先の御坂峠(山梨県)で綴った随筆的短編。
富士山を見ながらの心の変化や周囲の人々との交流が、ユーモアを交えて描かれます。「書くとは何か」を考えさせられる作品。

8. ヴィヨンの妻(1947年)

飲んだくれの夫を支える「私」の視点から語られる短編。
家庭内の矛盾や女性の強さ、そして人間の滑稽さを描きながら、どこか救いのあるラストが印象的です。

※太宰治の作品は、現代の中高生にも読みやすい文体であり、国語力の育成や読書習慣のきっかけにも最適です。

(文責:千尋進学塾 教室長)

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