【高校数学】東大模試に出た「因数分解の罠」 1次式では割れない4次式をどう料理する?
高校数学の学習指導をしていると、時折「見た目が素直なのに全然割れない方程式」と出会います。
今回ご紹介するのは、東大模試で出題された次の4次式です。
P(x) = x4 + 9x3 + 16x2 − x − 3
見た瞬間、「あっ、(x − a)(3次式)かな?」と考えるのは自然な反応です。
ところが、これがなかなか手ごわい。整数の解が全く見つからないのです。
Step1:因数定理で“入口調査”
まずは因数定理を使って、1次式の因数があるかどうかを調べます。
1次式 (x − a) が因数になるのは、P(a) = 0 となるときだけです。
代表的な整数を代入して計算してみます。
P(1) = 1 + 9 + 16 − 1 − 3 = 22
P(−1) = 1 − 9 + 16 + 1 − 3 = 6
P(3) = 81 + 243 + 144 − 3 − 3 = 462
いずれも 0 にはなりません。つまり、1次式では割れないタイプです。
Step2:2次式 × 2次式を大胆に仮定する
1次式がダメなら、次に考えられるのは
(x2 + p x + q)(x2 + r x + s)
という「2次式 × 2次式」の形です。
この形を展開すると、
x4 + (p + r)x3 + (pr + q + s)x2 + (ps + qr)x + qs
元の式と係数を比較すると、次の4つの関係式が得られます。
- p + r = 9
- pr + q + s = 16
- ps + qr = −1
- qs = −3
Step3:定数項「−3」から一気に絞り込む
qs = −3 を満たす整数の組は次の4通りです。
| q | s |
|---|---|
| 1 | −3 |
| −1 | 3 |
| 3 | −1 |
| −3 | 1 |
この中から、他の条件も満たす組を探します。
Step4:最終的に当たりを引くのはコレ
試行していくと、q = −1, s = 3 のときに全てが整合します。
このとき、残りの連立から
p = 2, r = 7
が求まります。
最終結果:これが東大模試の答え
以上より、因数分解は次のように完成します。
(x2 + 2x − 1)(x2 + 7x + 3)
これは元の式と完全に一致します。
生徒に伝えたいポイント(教室長の視点)
- 整数解がない=1次式で割れないと気づくのがポイント
- 「2次式×2次式」へ発想を切り替える柔軟性が大切
- 定数項から組を絞るのは、昔ながらの王道の手法
- 東大模試では奇抜さよりも丁寧な論理が問われる
数学は、手順の切り替えが得点を大きく変えます。
千尋進学塾でも、この手の「一見シンプルなのに奥が深い問題」は授業で頻繁に扱います。
落ち着いて手順を踏めば、必ず突破口が開けます。
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