8月20日付の中日新聞三重版でも紹介されていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。
実は今回、千尋進学塾に中学生の頃から通ってくれている桑名高校2年生の生徒も、このプログラムに参加していました。
せっかくですので、台湾から帰ってきた本人に、実際にどんな研修だったのか、少し話を聞いてみました。
公式資料だけでは分からない、高校生本人が実際に感じた台湾の様子もご紹介します。
桑名高校2年生20人が台湾へ
今回の研修は、桑名市が実施する「世界を目指す若者応援事業」の一環です。
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校である桑名高校の2年生を対象として、20人が台湾の国立陽明交通大学(NYCU)主催のサマープログラムに参加しました。
桑名市によると、半導体分野をはじめとする科学技術について学ぶだけでなく、半導体関連施設の視察や国際交流なども行うプログラムです。
「どうして応募したの?」と聞いてみると……
まず聞いてみたのは、今回のプログラムに参加しようと思った理由です。
「台湾に行きたかったから。」
とてもシンプルな答えでした。
最初から「半導体について研究したい」という理由だったわけではないようです。
しかし、私はむしろこれでよいのではないかと思います。
「行ってみたい」「見てみたい」という好奇心から始まって、実際に現地へ行った結果、それまで知らなかった大学や産業、進路に出会う。
高校時代の経験として、とても大切なことではないでしょうか。
なお、希望すれば全員が参加できるわけではなく、本人によると、参加にあたっては志望理由書の提出と面接による選考があったそうです。
国立陽明交通大学のクリーンルームにも入ったそうです
台湾では新竹を訪れ、国立陽明交通大学で研修を受けました。
何をしたのか聞いてみると、中国語の講座などに加えて、大学が持つクリーンルームにも入ったとのこと。
しかも、外から見学しただけではありません。
防塵服を着用して、実際にクリーンルームの中に入ったそうです。
話を聞いていた私も、これは少し驚きました。
高校生の段階で、海外の大学を訪れ、実際の研究・教育施設に触れることができるのは貴重な経験です。
台湾は「夜市だけではなかった」
台湾について、行く前と行った後で印象が変わったかも聞いてみました。
すると、
「夜市とか、そういうところばかりじゃないんだなと思った。」
とのこと。
台北については観光地というイメージを持っていた一方、今回訪れた新竹では高層マンションなども目につき、本人には高級住宅地のような印象があったそうです。
もちろん、これは実際に現地を訪れた一人の高校生としての感想です。
それでも、「台湾」と聞いたときに思い浮かべる景色が、実際に自分の目で見ることで増えたことには意味があると思います。
ちなみに、現地でおいしかったものを聞いてみると、答えは「小籠包」でした。
一番印象に残ったのは「英語への抵抗が減ったこと」
今回、私が特に印象に残ったのはこの話です。
「研修で一番印象に残ったことは?」と聞いてみたところ、少し考えた後、こんな答えが返ってきました。
「英語で話すことに、そんなに抵抗がなくなったかもしれない。」
台湾では、英語を使ってコミュニケーションを取る機会もあったそうです。
これはとても大きな経験だと思います。
英語は学校では「教科」です。
単語を覚えて、文法を勉強して、長文を読んで、テストを受けます。
しかし海外へ行けば、英語は人と話したり、何かを知ったりするための「道具」になります。
そして、実際に使ってみて「通じた」という経験をすれば、英語を話すことに対する心理的なハードルも少し下がります。
英語力が数日間で突然大きく変わるわけではありません。
それでも、「英語を使うことへの抵抗が減った」という変化は、その後の英語学習にも影響するのではないでしょうか。
理系の専門分野を深めていくと、英語は必要になってくる
今回のプログラムには、桑名市多度町御衣野に三重工場を持つユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン株式会社(USJC)も協賛しています。
USJCは公式に、「世界で活躍できる未来の半導体人材の育成支援」に賛同して、この事業を支援しています。
半導体に限らず、理工系の専門分野を深く学んでいけば、いずれ英語を避けて通ることは難しくなります。
最先端の研究論文や技術情報には英語で発信されるものが数多くあり、世界の研究者や技術者との交流にも英語が使われます。
私は、「まず英語を勉強してグローバルな人材になろう」という順序だけではないと思っています。
何か専門的に学びたいことがある。
その分野をもっと深く知ろうとする。
そうすると、自然に英語が必要になる。
そういう順番もあるはずです。
今回の台湾研修は、高校生がそのことを実感する一つの機会にもなっているように感じました。
桑名市多度町にあるUSJCとは?
USJCという会社を初めて聞いた方もいらっしゃるかもしれません。
正式名称は、ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン株式会社(United Semiconductor Japan Co., Ltd.)。
三重工場は桑名市多度町御衣野にあります。
この工場はもともと富士通の半導体工場をルーツとしています。
1984年に三重工場が開設され、その後の事業再編を経て2014年に三重富士通セミコンダクター株式会社となりました。
2019年には台湾の大手半導体ファウンドリ企業UMC(United Microelectronics Corporation)が株式を100%取得し、現在のUSJCとなっています。
したがって、「現在も富士通系の会社」というより、富士通の半導体事業をルーツに持ち、現在は台湾UMCグループの一員となっている半導体メーカーという説明が正確です。
三重県の半導体産業というと、四日市市のキオクシアがよく知られています。
しかし、私たちの身近な桑名市にも、こうした大規模な半導体製造拠点があります。
USJCは桑名で新たな設備投資も予定
USJC三重工場は、単に「昔から桑名にある工場」というわけでもありません。
2026年2月には、USJC・桑名市・三重県の3者が企業立地協定を締結しています。
桑名市によると、USJCは多度町御衣野の三重工場に約57億6千万円を投資し、月間約3,000枚分の製造能力を増強する予定です。
さらに、新規常用従業員100名の雇用も予定されています。
半導体産業では今後も技術だけでなく、人材をめぐる競争が続いていくでしょう。
その意味でも、高校生の段階から半導体や科学技術の世界に触れてもらう今回の取り組みは、地域の産業と教育をつなぐ意味を持っているように思います。
「海外の大学」という選択肢にも気づいた
もう一つ、本人が話してくれたことで印象的だったことがあります。
現地で案内してくれた学生の中に、日本から海外の大学へ進学した日本人がいたそうです。
その姿を見て、
「海外の大学っていう方法も、一応あるんだなと思った。」
とのこと。
もちろん、これですぐに海外大学を志望するという話ではありません。
しかし、それまで「大学進学」といえば日本国内の大学を考えていたところに、海外の大学へ進学するという道も存在すると実感できたこと自体に価値があると思います。
高校時代には、自分が知っている世界そのものを広げる経験も大切です。
どんな進路を選ぶにしても、選択肢を知ったうえで選ぶことと、知らないまま選ぶことでは大きく違います。
桑名市・三重大学・国立陽明交通大学も連携
今回の取り組みは、1回の海外研修だけで終わるものではなさそうです。
2025年11月には、桑名市・三重大学・国立陽明交通大学の3者が、半導体人材の育成などを目的とする「協力宣言書」に署名しています。
桑名市によると、国立陽明交通大学が半導体分野で日本の自治体とこうした協力宣言書を交わしたのは全国初とのことです。
桑名の高校生が台湾へ行き、世界的な半導体産業や大学に触れる。
そこで興味を持った生徒が理工系へ進み、さらに大学や海外で専門性を高めていく。
そんな流れがこれから生まれてくるのかもしれません。
台湾からお土産もいただきました
インタビューの最後には、台湾のお土産までいただきました。
台湾の食品メーカー「義美(I-MEI)」の「義美小泡芙」という小さなシュー菓子です。
私もいただきましたが、おいしかったです。
ちょうどお腹が空いていたこともあって、ありがたくいただきました。
ありがとうございます。
半導体、大学、英語、海外進学……と少し難しい話が続きましたが、小籠包を食べたり、お土産を選んだりすることも含めて高校生の海外研修です。
台湾そのものを楽しんで帰ってきた様子が伝わってきました。
高校選びは「合格した後」まで考えてみる
桑名高校は、桑名・いなべ地域の中学生にとって人気の高い高校の一つです。
志望校を考えるときには、どうしても偏差値や大学合格実績に目が向きます。
もちろん、それらは非常に重要です。
しかし、高校生活は3年間あります。
その高校へ進学したからこそ、どんな人と出会えるのか。
どんな場所へ行けるのか。
どんな経験ができるのか。
そこまで含めて高校を見てみると、学校選びは少し違って見えてきます。
今回参加した生徒によると、参加者は「一期生」と説明を受けたそうです。
この取り組みが今後どのように発展していくのかも楽しみです。
そして今回の台湾研修を経験した20人の中から、将来、本当に半導体を研究する人、海外で学ぶ人、世界と関わる仕事をする人が出てくるかもしれません。
高校受験は、合格することがゴールではありません。
その高校に入って、何を学び、何を経験するのか。
桑名高校を目指している中学生の皆さんにも、ぜひ入試のその先まで想像しながら、これからの勉強に取り組んでもらえればと思います。





