ロシアには、新しい家に引っ越すとき、まず猫を家の中に入れるという風習があるそうです。
猫は環境の変化に敏感で、家の中で落ち着ける場所を見つけるのが得意です。そこから、「猫が安心できる家は、人にとっても良い家だ」と考えられてきたのでしょう。
なかには、新居に最初に入れるための猫を借りる、という話まであります。なかなか面白い発想です。猫としては「急に呼ばれて、家の気を整える係」に任命されるわけですから、少し迷惑かもしれません。
ただ、この話は単なる海外の面白い習慣では終わりません。
人は大事な場面になると、何かしら「最初の行動」を決めたくなるものです。
受験も同じです。
試験本番では、ルーティンが心を落ち着かせる
模試や入試のとき、生徒によっては「必ずこの順番で解く」と決めていることがあります。
たとえば大学入試で物理と化学がある場合、「自分は必ず化学から解く」「自分は物理から入る」といった具合です。
高校入試では、基本的には大問1から順番に解くことが多いですが、それでも問題用紙を開いたときの確認の仕方、時間配分、見直しの順番などには、それぞれの型があります。
こうしたルーティンは、単なるこだわりではありません。
試験中に焦ったとき、自分をいつもの状態に戻すための手順です。
「おまじない」には、使ってよいものがある
もちろん、すべての験担ぎが良いわけではありません。
たとえば「勝つ」にかけて試験前日にカツカレーを食べる、というのはおすすめしません。脂っこく、消化に負担がかかるものを大事な試験前に食べるのは、合理的ではありません。
験担ぎにも、線引きが必要です。
健康を損なわない。集中を邪魔しない。試験時間を大きく奪わない。
この範囲であれば、自分を落ち着かせるための小さなおまじないは、むしろ活用してよいと思います。
試験会場にあるものを、味方にする
試験中に使えるものは限られています。
鉛筆、消しゴム、時計。高校入試なら定規が使える場合もありますが、大学入試では使えないことも多いです。
だからこそ、試験会場に必ずあるものを、自分の思考を助ける道具として使うことが大切です。
たとえば図形や光の問題では、問題用紙を上下逆さまにして確認する。左右や上下の反転で混乱しそうなとき、頭の中だけで考えず、実際に紙を動かしてみる。
天体の問題では、アナログ時計を東西南北に見立てることもできます。12時を北、3時を東、6時を南、9時を西と対応させれば、方角の整理がしやすくなります。
これは魔法ではありません。
けれど、試験中に焦ったとき、「いつも通り、この手順で考えればいい」と思えることには、大きな意味があります。
ルーティンは、練習のときから作る
大切なのは、本番だけ特別なことをしないことです。
本番で使いたいルーティンは、普段の練習や模試の段階から使っておく必要があります。
普段は何もしていないのに、本番だけ突然やろうとしても、うまくいきません。むしろ余計に焦ります。
練習のときから、同じ順番で確認する。同じ方法で図を見る。同じように時計を使う。
そうすることで、その行動は「特別なこと」ではなく、「いつものこと」になります。
猫も受験生も、最初の一歩が大切
ロシアの新居に入る猫も、受験生の試験開始直後のルーティンも、根っこは同じです。
最初の行動で、自分の心を整える。
結果を出すためには、知識や学力はもちろん必要です。しかし、それだけではありません。
本番で力を出し切るためには、自分を落ち着かせる方法を持っていることも大切です。
迷信のように見えるものでも、合理性を邪魔せず、心を整える助けになるなら、それは立派な受験戦略です。
猫を借りてまで新居に入れるかどうかは別として、受験生にはぜひ、自分なりの「最初のルーティン」を持ってほしいと思います。
本番で頼れるのは、特別な奇跡ではありません。
普段から積み重ねてきた知識と、いつも通りに動ける自分です。
そしてその「いつも通り」を作るのが、日々の練習です。
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